アメジスト 第二話
なんてことはない今日に感じているかもしれない。
でも私にとっては特別な日。
嗚呼、なんて素敵な日だ。
素敵な人に出会うことができたのだと感じた。
優しい手を持つ私の主は、そっとカーテンを閉じて
ベッドに体を沈ませ、数回の寝返りの後、寝息とともに動かなくなった。
しんとする空間。
ただ月光が体を照らしていた。
そこで考えた。
「自分は何のために生まれてきたのであろうか。」
きっと今日のような日をほかの石たちは
「この人に拾われるために生まれてきた」
などと思っているのだろうか。
しかし果たして本当にそうなのであろうか。
自分はぐるぐると考察した。
そして気づいた。
「考える目線はいつも主に向けられている」
さらに方程式は
「主のことを想っている。」
私は、
“真実の愛の守護石”という本能が目覚めた。
大きく息を吸い、囁いた。
「主の幸せをお守りいたします」
そんな囁きがこの後、雨の音に溶けるということも知らずに。
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